斎藤昭人の情報戦に立つブログ

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経済制裁はいかにロシアを殺すか?part.7

Kamil Galeev氏による論考記事の和訳。経済制裁によってロシアがどのように崩壊していくか、具体的かつ明瞭な論旨で考察されています。 こちらはpart.7になります。

part.6はこちら

 

さて、彼らはどうするのだろう?自給自足農業への回帰を奨励する動きもある。良さそうだが、うまくいかないだろう。実際、かつてロシア人はダーチャや自家菜園で経済危機を乗り切った。しかし、その文化は失われた。団塊の世代は、それができる最後の世代だ。

 

自給自足農業は極めて非生産的だ。また、非常に手間と時間がかかる。また、若い人たちには必要な能力が欠けている。経済が好調で石油が高価だった時代、彼らはバブーシュカから庭の作り方を習わなかったし、今もすぐに習うことはないだろう。

 

今回の経済危機は、ロシアの歴史上特異だ。まず第一に、現在は他に類を見ないほど高齢化している。これまでの危機の時は、もっと若年人口が多かった。さらに重要なことは、国民のほとんどが自給自足農業の方法を忘れてしまった後に起こる、最初の危機だということだ。

 

ロシアの経済状況はひどいものだ。地方自治体が非難されるような大惨事だ。どうする?買い占めだ。可能な限りの在庫を。すでにそうなっている。ただ、スタブロポリでは 砂糖は不足していない。 なぜか?他の地域への持ち出しを許可していないからだ。

 

それがロシア崩壊の大きな要因になるだろう。地方当局が突然独立を宣言するわけではない。少なくとも今のところ、それはない。しかし、地元の利益優先で行動するようになる。なぜなら、そこで大惨事が起きれば、彼らはその責任を負わされるからだ。

 

文字通り何もかもが品不足になる中、地元の利益優先で行動することで 、彼らは必然的に在庫を抱えることになる。サプライチェーンや技術の連鎖を断ち切る。経済制裁で通信網は悪化しているため、ますますやりやすくなる。

 

ロシアは、道徳的に正当化された集団行動によって崩壊することはないだろう。ロシアは、自分たちの地域の破滅を避けるために、自分たちの役人によって、その結束が崩されることになる。それは事実上の経済的分離主義であり、政治的分離主義はもっと後になるであろう。

 

ロシアの崩壊と、その後の分離主義国家の台頭を論じるとき、多くの人が民族紛争や政治的アイデンティティに注目する。それはそれで間違ってはいない。しかし、私は、崩壊の主な要因は、地理的、社会経済的なものであると主張する。

 

ロシア崩壊の最良の指標はユーゴスラビアでもオーストリアハンガリーでもない。クレオール半島人の対立があったスペイン植民地帝国の崩壊だ。ロシアは、政治、経済、文化の面で、多くの人が考えている以上にラテンアメリカ的国家なのだ。

 

(終)

 

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サブスタックに長文読解を掲載する予定。ロシアはなぜあんなに大きく、あんなに寒くなったのか、という文章。ロシア帝国拡大の政治経済学的な論理を概説している。なぜロシアが南下するよりも早く北上したのかを説明している。

 

Kamil Galeev氏について チェブニング奨学生としてセント・アンドリュース大学で近世史の文学修士過程で勉強中。2019年7月、北京大学の円清院を卒業し、中国学と経済学の修士号を取得。また、高等経済学校(モスクワ)で歴史学の学士号を取得。

 

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