斎藤昭人の情報戦に立つブログ

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経済制裁はいかにロシアを殺すか?part.3

Kamil Galeev氏による論考記事の和訳。経済制裁によってロシアがどのように崩壊していくか、具体的かつ明瞭な論旨で考察されています。

こちらはpart.3になります。

part.2はこちら

 

さて、チュバイスは良い決断をしたものだ。逃げられるうちに逃げてしまえ。統一ロシア与党の国会議員は、すでに許可なく国外に出ることはできない。ミロノフのように、禁止される前に脱出した賢い者だけが、今、海外で安全なのだ。他の者はモスクワに閉じ込められている

 

さあ、いよいよ崩壊のシナリオを概説しよう。まず、制裁によって、その技術やサプライチェーンが破壊される。ロシアの自給自足を信じている人は多い。しかし、ロシアは自給自足ではない。悪の帝国ではなく、技術輸入に完全に依存した通商連合国なのだ。

 

機械類は制裁の最初の犠牲者だ。マイクロチップからベアリングに至るまで、あらゆるレベルで外国製部品を使っているのだ。このように、経済制裁は以下の領域で破壊を起こす。

1. 軍需産業

2. 輸送・通信回線

3. 消費財の生産

かくして、ロシアはバラバラに崩壊する

 

経済制裁ではプーチンは引き下がらない。ロシア国民を反抗させることもできない。それは大規模な集団行動であり、起こりえないことだ。しかし経済制裁は、ロシアの軍事力を弱体化させ、より小規模で実行しやすい集団行動、つまり地方の分離主義を刺激することになる。

 

まず、軍需産業から。直感に反するかもしれないが、軍需産業は特に輸入に依存している。なぜか?それは、軍事産業が比較的複雑だからである。例えば、同産業はロシアにおける精密機械製造の主要な消費者であり、これらの機械の80%以上を購入している。

 

クリミア併合は、ロシアの軍需産業に大きな打撃を与えた。スベルドロフスク州のセルゲイ・ペレストリン工業大臣が認めたように、戦車生産などウラル地方の工場は2014年直後から部品供給に問題を抱えるようになった。

 

そのため、ロシアの新型兵器、例えばアルマータ戦車は量産されることがなかった。2015年に量産が開始されるはずだったが、2022年になっても制裁のため、量産されなかった。電子部品の輸入も、トランスミッションの輸入も、すべてクリミア併合後、ストップしてしまった。

 

問題の側面はもう一つある。ロシアはソ連時代に、かつて持っていた多くの技術力や能力を失ってしまったようだ。ソ連では、技術者という職業は権威があり、高給だった。特に軍事技術者は王者だった。しかし、今では尊敬もされず、給料ももらえない敗者になってしまった。 

 

その結果、建設局や技術系機関には、優秀な技術者が入ってこなくなった。大卒で業界に入る人もいたが、家族を養わなければならないので、辞めざるを得なかった。戦車業界の技術者の平均年齢は、現在55〜60歳である。

 

老いた技術者が死んで引退していく一方で、彼らから学ぼうとする有能な若者があまりにも少なかった。老いた技術者が持つ競争力は彼らとともに死んでいった。マカロフ国防副大臣(当時)が指摘したように、ロシアはソ連戦車砲身製造技術を失ってしまったのだ。